第1章 名探偵と助手
ある日の昼下がり。
乱歩と美雪は武装探偵社に居た。
やることと云えば、昨日の事件についての書類作成だ。美雪がパソコンに向かってにらめっこをしている隣で、乱歩は机の上に脚を置いて背もたれに持たれながらラムネを飲んでいた。
乱歩「ねぇ〜美雪、僕すごーく暇なんだけど」
乱歩が、飲み干したラムネのビンをカラカラと振りながら美雪に話しかける。逆さにしてみたりしているが、ビー玉が取れる気配はない。
美雪はパソコンを睨んだまま
美雪「ちょっと待って下さい乱歩さん。昨日の乱歩さんの大活躍をパソコンと云う名の電子媒体にこと細かく記録しているんですから。なんてったって、"名"探偵の大活躍ですよ!?それを二行や三行の文で伝えきるなんて不可能です」
と答える。
それを聞いて、乱歩がいい気にならないはずが無い。
何故なら、乱歩は美雪のことをとても好いており、彼女の前では常に格好よくありたいと願っているからだ。
乱歩「はははは!それは仕方ないねぇ。だって、何しろ僕は『名探偵』だし?僕の異能力「超推理」で解けないものは何一つだって無いのだから!すごいよね?僕って天才だもの。恰好いいでしょ?」
乱歩が高らかに笑いながら美雪に詰め寄ると、やっと書類作成が終わった美雪が乱歩に向き直りニコッと微笑んで言う。
美雪「はい!乱歩さんはとても格好いいです!」
自分から聞いておいて、美雪にそう答えられると真っ赤になる乱歩。自分で自分を褒めるのはいいくせに、好きな女に褒められると照れてしまう乱歩を、美雪はとてつもなく愛していた。
美雪「あれ?乱歩さん真っ赤ですよぉ?もしかして照れちゃったんですか?」
美雪がくすくすと笑いながら聞くと
乱歩「て、照れてない!」
とそっぽを向いてしまう。
さっきまで威勢のいいことを言っておいて、惚れた女に褒められた瞬間これである。
美雪「クスクス、乱歩さんかわい〜」
美雪が揶揄(からか)い半分本気半分でそう云うと、突然体が後ろに倒れ……