第32章 I am making my mind
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今まさに、突入の号令が下されようとした時だった。
「!」
その場全員がザッ、と踵(かかと)を一歩退いたのは、上を向いて傾いた重心を支えようとしたからだ。
錆び付いた、廃工場のトタン屋根が
ザリ……と鳴った
わざと立てられたかのように耳に付く音を追えばソコには、緋一色の空を背に立つ
死柄木 弔
「へえ……」
死柄木は感心したように呟いた。
6m眼下で、こちらを見上げるヒーロー達、
隙間を埋めるのは警察の犬共だ
「遅かったなぁ…ヒーロー共
待ちくたびれたよ…」
両手げ高笑う様は
あのオールフォーワンのようだ
空が滲む藍色に滲んでいく
差す赤が影を長く伸ばしていく
死柄木の影だけが彼らと同じ地に頭を置いた
と、そこへ
もう一つ影が寄り添った
一回り小さな影
その髪がふわり
確かに揺らめいた
「…………くるみ」
轟が首を絞められたような声で、その影の名前を呼んだ
死柄木に腰を引き寄せられた女は、
何色とも言えぬ光を放っていてたその瞳で
見下してくる。