第19章 危険な香りの温泉旅行
・・・あぁ、ダメだ私。
楽しい旅行でこんな事考えてたら勿体ない!
そう思い直し、私は車のミラーに映るおそ松をちらりと見てから、トド松に口を開く。
「べっつに~。トド松、隣のおそ松を旅行中ずっとマークしててね!」
「え、なんで?」
「フーン、大丈夫だナス子!このクソ長男ことおそ松は俺、カラ松が引き受けよう!」
カラ松の返事に安堵して、親指を立てると、カラ松も同じように親指を立ててくれた。
だが先日の事を思い出すとやはりカラ松相手でも少し緊張してしまう訳で・・・バレないようそっと目を逸らす。
「十四松は隣の一松と行動を共にしてね!旅行終わるまでずーーーーーっと!!」
「え、なんで??一松兄さん、姉さんと喧嘩でもしたの?」
「・・・」
家を出る前、席順を決める時、運転にすぐケチをつけるチョロ松に無理やり運転手を任せ、私は六つ子の意見を全て無視してさっさと助手席へと乗り込んだ。
間違えてもおそ松と一松の隣に座りたくなかったからだ。
私はまだお怒りですよー、二人共気づけよー!
席順は、運転手チョロ松、助手席私、真ん中の列に3人、2人と乗っている。
おそ松が真ん中、助手席の後ろにカラ松、運転席の後ろににトド松。
またその後ろには、十四松と一松が乗っている。
7人もいると車の中はとても賑やか・・・というか、うるさい。
けど、そんな騒がしいのも、私は昔に戻ったみたいで少し嬉しくなった。
「ナス子、ちょっと地図見てくれる?」
「えー、今ちょっとゲームを・・・」
早速スマホを取り出し出発前に中断していたゲームを起動する。
すると隣から不機嫌そうな声、ハンドルを握る手に力が入ったチョロ松がコチラを見る。
「お前はなんの為に助手席にいるんだよ、助手席ってのは運転手の補助をする為の人が座るものであって、こうやって道を確認したい時とかに・・・」
「あーもーっ、アンタは助手席以外でも煩いのね結局!ナビつければいいじゃーんっ」
私はスマホから目を離すと、チョロ松の小言に耳を押え、ナビを弄る。
レンタルカーを借りて来たんだけど、丁度いい車がなくて、凄く古い車しか借りられなかった。
とっても割安で借りられたから、そこのところはよかったんだけど。