第7章 ワナにハマった俺のせい?
「……それで、今日は何の用ですか?」
隣に座って愛想良く笑う美咲の、突然な質問。
……その顔は、どうなんだ。
なんか、聞きなれねぇ敬語でお客様扱いされてるような気がする辺り、コイツが必死に抵抗しているようにも、見える。
まぁ、こうなるように仕向けたのは俺だから、仕方ねぇか。
美咲に、少しでも早く近付きたいと願う、俺の欲のせい、だもんな。
分かっちゃいても、やはり落胆しちまう。
まだまだ、美咲と俺との距離は、遠い。
……しかし。
何を今更言ってんだ?
とは思っても、ヘタな答えは出来ないだろう。
揚げ足取られても面倒だ。
頭をフル回転させつつ、コップの中身をグッと飲み込んで、時間を稼ぐ。
……つっても、すぐに名案なんて、浮かぶはずなくて。
はぁ。
面倒くせぇけど、一応は聞き返しておくか。
「用がねぇと、ダメか?」
「は?」
言いながら、一人分のパンの半分を渡す美咲に、自然と口元が緩む。
昨日一緒に食った時と、おんなじだな。
なんて思うと、こんなにも些細な事でも嬉しくて。
だが、俺とは対照的に、美咲は顔を歪めた。
……そんなにイヤか?
俺が嬉しそうにするのが。
苦い思いが湧き上がって、溜息を吐きそうになって。
グッと、耐えた。
こうなってでも、美咲を捕らえると決めたのは、俺だ。
こんくらいで折れてたら、先が思いやられる。
「そんで?用がねぇなら、来たらダメなのか?」
「いや、ダメっていうか……わざわざ部屋に来ることなくない?」
言いながら、俺のコップに飲み物を注いでくれる美咲。
パンを口に含み、パサついた喉を潤そうと、一口飲み、思案する。
美咲のこの言い方……
どう考えても、逃げ道、探してるよな?
まぁ、想定内では、ある。
快く受け入れてくれるとは、思っていない。