第15章 ※隠したウソを暴くアイツ
「か、勘違いじゃない……?」
すっとぼけて、やり過ごそう。
ジャンがサシャを見たのは、勘違いだった。
そういう事にしよう。
それが、私が必死に絞り出した答えだった。
何とかこの危機的状況を回避しようという、私の精一杯の抵抗だ。
一瞬、きょとんとした顔をしたジャンだったが、すぐにその顔は元に戻っていく。
その表情が……
私の企みは完全に失敗したという事を伝えてくる。
敵はこんな事に誤魔化されてくれる程、甘くはなかった。という事か。
次の一手が見つからないまま、あちこちに視線を泳がせる私に、ジャンは笑った。
「……本当、面白れぇよ。お前。」
そう言って、私の首筋に頭を埋めてくる。
「ちょっ……?!」
「んー?」
焦りと混乱で、めちゃくちゃになっている私とは反対に、余裕そうな声。
その声の後、ふうっ。とした吐息が、首筋をくすぐった。
「な、にしてる、の……?」
「別にー?」
そう言って、私の肌に唇を押し当て、噛み付く。
ゾクゾクするような感覚が、背中から全身を駆け巡る。
「ちょ……と、アンタ……ッ!」
必死に肩を押して、顔を上げさせる。
淡い色で光を放つ鉱石。
その光から逆光で照らされるジャンの顔は、妖しく歪んでいた。
……この顔は、まずい。
こんな風に危険を察知するのは、一体何度目になるんだろう。
息を飲む私に、ジャンは微笑んだ。
「美咲。」
「ッ……、」
真っ直ぐ瞳を見ながら、小さく呟かれた私の名前。
ジャンは驚く程に甘い声をして、捕食者のようなギラギラとした光を、その瞳に宿している。
だめだ。
逃げられない。
そう頭で理解するより前に、身体が動いていた。