第15章 ※隠したウソを暴くアイツ
「やっと落ち着いたな、仕事。」
「そうねー。あとはもう技術的なものだし、私は楽になるかなぁ。」
「ははっ。そうだな。」
パンに齧り付いたジャンに、同調して頷いた。
私は既に、小さくなってしまった手元のパンを口に運び、飲み物で喉を潤す。
あー。
やっぱ、個人的には配給のパン、好きだわ。
呑気にそんな事を思いながら、千切って食べてを進めていたら、ジャンがフとこちらを向いた。
「そういや、エルヴィン団長に、サイン貰いに行ったんだっけ?」
不意に聞かれてドキッとした。
心臓はうるさくらいに存在を強めてくるけれど、冷静を装って声を出す。
「あー。あの日、エルヴィン団長いなくてさぁ……。」
「資料はどうしたんだ?」
……やっぱり、聞いてくるよね。そこ。
そう思いながらも、憂鬱な気持ちは変わらない。
私は変な態度にならないよう努めて、ジャンの問いに答えた。
「リヴァイ兵長が残ってたから、リヴァイ兵長に渡したよ。」
「……へぇ。」
私の答えを聞いた途端、ジャンの顔が妖しく歪む。
引き攣りそうになる頬を必死で堪えて、変な緊張で乾いた喉を潤そうと試みた。
……が、それはジャンの手によって阻まれた。
「……な、に?」
「嬉しいか?リヴァイ兵長との接点が増えて。」
「ッ…………!」
ボッと、顔に火が付いたように感じた。
間違いなく私は今、絶賛赤面中だ。
そんな私に、愉快そうなジャンが更に詰め寄ってくる。
「休み前の夜、どこにいた?」
「どこ、って……部屋に決まってるでしょ。」
知られたくない。
その一心で、嘘を吐く。
動揺を見破られないように、ジャンの顔を真っ直ぐ見据えて。
けれど、悪魔は、そんな事お見通しだ。とでも言うかのように、口の端を持ち上げた。
「嘘だな。」
「何でッ……。」
断定口調に反論すると、更にジャンの笑みは深くなった。
「来たんだよ、俺は。その日の夜、ここに。」
「ッ……な、んで……っ!」
なんで。
どうして。
何のために。
ぐるぐる回る疑問と、嘘がバレてしまった焦りが混ざって、思考を阻む。
私はただ呆然と、ジャンを見つめるだけだった。