第14章 ※お前のウソはダレのせい?
美咲の白い肌にそっと唇を寄せると、「ちょっ……?!」という、焦ったような声が、落ちてくる。
逃げ場のない空間、距離。
あとはもう俺に食われるしかない彼女を思うと、不憫で。
……愉快だ。
ふぅっ。
淡い吐息で、美咲の首筋を撫でてやった。
「な、にしてる、の……?」
「別にー。」
慌てる美咲に、俺は気のない返事をした。
分かりきった事、聞くなよ。
俺がお前を組み敷いた後、何が起こるのか。
それをお前が制止出来た事が、一度でもあったか?
……お前が、悪い。
往生際悪く、俺にウソを貫き通そうとした、お前が。
筋違いな思いだと自覚しながらも、俺は目の前の肌に噛み付いた。
「ちょ……と、アンタ……ッ!」
さらに強張っていく美咲の腕が、俺の肩をぐっと押し返してくる。
まだ抵抗すんのか。
渋々と顔を上げた先。
美咲の顔は、怯える被食者そのものだ。
……その顔、いいな。
顔が緩むのを堪えられずに、俺は彼女に呼び掛ける。
「……美咲。」
俺の声に、彼女はビクリと身体を震わせた。
俺から目を離さないくせに、その瞳に揺れる光には、怯えを滲ませて。
まるで「助けて」とでも懇願しているかのようだ。
……誰が、助けてなんかやるかよ。
俺が笑みを浮かべるのとは正反対に、美咲はもがく。
「や、だ……ッ!やめ……!!」
引き攣っていくその顔にも、怯まなかった。
むしろ、加虐心が湧いて、何故か愉快な気持ちが湧き上がってくる。
どうしてお前はそう、俺を煽るんだ?
「なぁ。暴れんな、って。」
「やっ……!」
耳元で囁くと、美咲は面白いくらいに身をすくめた。
ここが弱いのは、知ってる。
その隙に、ジタバタしていた手足を、優しく拘束する。
俺は耳に寄せていた唇を離し、顔を上げる。
美咲の顔、その表情をじっと見つめて、もう一度呼び掛けた。
「美咲。」
「な、何よ……?!」