第14章 ※お前のウソはダレのせい?
やけくそに近い気持ちで、俺は恋敵の名前を吐いた。
「……リヴァイ兵長。」
その、たった一言で、美咲の顔色が変わる。
俺は身体ごと美咲に向き直り、彼女の機敏な動作をカケラも逃さないというかのように、じっと見つめる。
「一緒だったんじゃねぇのか?……あの日、サシャは壁の上にいた。」
また、少しだけ美咲の瞳が揺れて、僅かに震えた唇を、ギュッと噛み締めて息を飲んだ。
美咲は、答えない。
息が詰まるような空気の中で、俺の視線に耐えている、だけ。
沈黙、イコールは肯定だという事に、コイツは気付いてねぇのか?
少しずつ、距離を詰めていく。
一人用のベッドは、そこまで広くはない。
お前の逃げ場なんて、どこにもない。
俺は薄い笑いを浮かべて、尋ねた。
「なぁ、美咲。」
「な、何……?」
「お前、誤魔化せると、思ったのか?」
ぐっと寄せられた顔。
目前に迫った美咲の表情が、また凍り付いた。
答えはもう、出てるだろ。
何を迷う必要がある。
早く、認めちまえ。
チェックメイト、のつもりだった。
……なのに。
ゆっくり開いた美咲の口からは、信じられない言葉が飛び出した。
「か、勘違いじゃない……?」
「…………。」
言葉を失ってしまうほど、呆気にとられた。
予想外も予想外。
ここまできて、まだ粘る気なのか、お前は。
どんな悪足掻きだよ。
ははっ。
もう、笑うしかねぇ、な。
俺は視線を泳がせている美咲の首筋に狙いを定めて、呟いた。
「……本当、面白れぇよ。お前。」