第13章 私の誤解と憧れのあの人
「随分と大変だっただろうな。ハンジの世話は。それに、シガンシナ区に向かうから、期限付きと来たもんだ。」
「あー……そうです、ね。もう、記憶もぼんやりですけど。」
苦笑いで返すと、リヴァイ兵長は片眉を下げて笑った。
「……フッ。あまり引きずらねぇタイプなんだな。」
「そ、んな事ないです。」
嘘を吐くこともないと思ったから、素直に本音を返した。
私は、引きずっていた。ずっと。
リヴァイ班に入れてもらえなくて悩んでいた事を、この人は、知らない。
けど、それを憧れのリヴァイ兵長本人に尋ねるつもりも、ない。
だから、リヴァイ兵長からも認めてもらえるように、私には頑張る道しか残ってないのだ。
私がやった事を、認めてもらえさえすれば、いい。
「……ほう。じゃぁ、プライベートでも引きずるタイプなのか?」
「え……」
思いもよらない方向からの攻撃に、口篭ってしまう。
しかも、私の瞳の奥を伺うように、リヴァイ兵長が覗き込むような視線を送るもんだから、咄嗟に目を逸らした。
「……悪い。野暮な質問だった。」
「いえ……。」
プライベートでは、そんな事ないです。
そう答えれば良かったのに、出来なかった。
だって、それが“事実”だから。
リヴァイ兵長が、全く私に寄り付かなかった。という、ただそれだけの事を。
気まずい空気を出すのもどうなんだ。と思いながらも、いたたまれない気持ちになってしまう。
私が勝手に、気にしているだけだって言うのに。
「……次も紅茶でいいか?後、そろそろちゃんとしたもの食わねぇとな。」
「え?……ぁ、はい。」
突然切り替えられた話題。
私の表情から、そうしてくれた事が分かった。
……やっぱり、大人だなぁ。
「パンには飽きてるからな……ライス系でも頼むか。」
「……そ、うですね。」
そうだ、せっかく一緒に美味しい御飯を食べに来ているっていうのに。
このまま沈んでいても、仕方ない。
私は気を取り直し、リヴァイ兵長と一緒に、メニュー表を眺めた。