第13章 私の誤解と憧れのあの人
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「こんな時は、労わりの言葉でも言った方がいいな。」
「……ぁ、お疲れ様、でした……。」
目の前には紅茶が入ったティーカップが二つ。
真正面で柔らかい顔をするリヴァイ兵長に、私は困惑の笑みを浮かべるしかなかった。
……どうしてこんな事に?
頭の中で、ぐるぐると回る疑問。
私の身に起こっている事態に、頭がついていけていない証拠だ。
さっきまで……
本当に、つい数十分前まで、私は絶望的な気持ちでいたはず。
なのに今は、その原因でもあるリヴァイ兵長と一緒に、前回来たお店にいる。
「……これは、悪くないな。」
「これって瓜、ですよね。でもホント、美味しい。」
「そうか。」
店主によって、運ばれて来たサラダを食べるリヴァイ兵長に、平気なフリをして答えた私。
内心は、ずっと心臓がばくばくしている。
本当なら、もっとパニックになっても仕方がないと思うくらい、だ。
けれど、さっき団長室で会話した時のように、リヴァイ兵長は至って普通。
この前のように、リヴァイ兵長はワインを最初に少しだけ飲んで、この前のように、兵士長のフィルタが外れているように見える。
だからこそ、意図が分からない。
突然姿を現さなくなった原因は?
今日誘ってくれた理由は?
兵長の柔らかい表情、その裏にある、本音が知りたい。
そう思いながらも、自分から切り出す事も出来ず……
ただ、ぬるくなった紅茶を、喉に流すだけだ。
ふわっと香る、紅茶の味が、心のモヤモヤを拭い去ってくれたら、いいのに。
同じようにティーカップを持っていたリヴァイ兵長が、「しかし。」と声を発したから、ハッとして顔を上げる。