第11章 距離が縮まるアイツとあの人
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「だーかーらー!何であんなに無茶振りなんかすんの?!って事よ!!」
「あぁ、ハンジさんは多分、自分と同じ生物くらいに考えてんだろな。お前の事。」
「それ、は、嬉しい、けど!モブリットさんもハンジさんも、地獄の処刑人を作るんだー、とか言って。中央憲兵からの書類、全部私に渡しちゃうし……。」
「信頼されてるって事だろ。」
「……信頼なんて、されてるのかな。私なんか、ヒストリアが危ない時に、側にいることも出来なかったのに。」
「じゃぁ、今の仕事……いっその事辞めちまえば?」
ジャンの言葉に、一瞬、口を紡ぐ。
現在、私の手には、ジャンが持って来てくれた配給のパンが握られている。
すでに、お皿にあったオムレツは食べた後、だ。
誰が作ったのか聞いた私に、ジャンは少しだけ照れたような素振りを見せ、「俺が料理なんてやったら、そんなにおかしいかよ。」と言った。
そんな彼の手料理をたいらげた私は、スイッチが入ったかのように愚痴を吐き出していた。
ついでに、パンをつまみながら。
ジャンは私の考えを否定せず、むしろ背中を押すようにして、ヒートアップする話しを、頷きながら聞いてくれている。
その対応に、心から感謝した。
同期の事も、自分が置いていかれている心境も。
何故か、ジャンだからこそ、言えた事もある。
変な遠慮も、面倒な説明も省いて、こんな事話せる相手がジャンしかいないことに、今更ながら気が付いた。
でも、今のハンジさんから引き受けた仕事を辞めるなんて選択肢は、私にはなくて。
「辞めない。絶対に辞めない。私だって104期なんだから、みんなと対等に戦えるくらいにはなりたいし、頼られたい。」
私もみんなと一緒に戦いたい。
早く、前に進みたい。
……のに、進めていないと焦ってしまうのは、自分に実力がないからだ。