第10章 揺れた瞳はダレのせい?
普通に。
正直に言えば、美咲の為に何かしてやりたかった。
この部屋に来て、お前と過ごしたかったから、もある。
……だが、そんな答えが何になる?
また、「は?」なんて言われたら、立ち直れる自信がねぇ。
さっき、少しだけ開いたはずの心の扉が、また閉じてしまったら元も子もない事も、十分躊躇する理由の一つ。
どう答えれば、お前の心に届くんだ?
正解があるなら……教えてくれよ。
あまりに長く考えていても、怪しまれるだけだろう。
俺は一口、水を飲んで、美咲に向き直り。
「なーんか、大変そうだったからなぁ。ハンジさんの手伝いなんかよぉ。任務中に聞いてもお前、絶対に弱音なんか吐かねぇだろ。」
そう呟いて、彼女の様子を探った。
一瞬だけまた、僅かに目が見開かれた気がする。
……分かったような事言うな、とか、言うなよ?
俺の読みは多分、間違ってねぇだろ?
弱気になりそうな自分を奮い立たせ、彼女の頭に再び、そっと触れた。
「……ちょっと気になったんだよ。」
最後は照れ隠しに近い。
いや、むしろかなり恥ずかしい。
何言っちまってんだ、俺は。
ちゃんと労ってやりたいのに、上手くやれない自分がもどかしい。
あーあ。
マジで、柄にもねぇ事やってんなぁ。
どっちかっつーと、自分の事しか考えてねぇような、そんな人間だと周りから思われてる自信もあるくれぇなのに。
もう今更、撤回もやり直しも出来ないのに、本当にこれで良かったのか?なんて気持ちが、腹の辺りでグルグル回っている。
マジで、ダセェ。
自分で自分が信じられない。
ただ……
素直な感情を纏った言葉は、“ただの同期”よりも、踏み込んだ距離を匂わせた。
俺だから言える事だと、思って欲しくて。
美咲がそんな深読みをしてくれるとは、期待しちゃいねぇが、それでもいい。
……気になってんだ。
お前の事が。
いつだって。
お前の側にいて、誰よりも敏感に、その変化に気付いてやりたいと、思ってるんだ。