第10章 揺れた瞳はダレのせい?
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「だーかーらー!何であんなに無茶振りなんかすんの?!って事よ!!」
「あぁ、ハンジさんは多分、自分と同じ生物くらいに考えてんだろな。お前の事。」
「それ、は、嬉しい、けど!モブリットさんもハンジさんも、地獄の処刑人を作るんだー、とか言って。中央憲兵からの書類、全部私に渡しちゃうし……。」
「信頼されてるって事だろ。」
「……信頼なんて、されてるのかな。私なんか、ヒストリアが危ない時に、側にいることも出来なかったのに。」
「じゃぁ、今の仕事……いっその事辞めちまえば?」
そう言った俺の言葉に、美咲の口が止まった。
「辞めない。絶対に辞めない。私だって104期なんだから、みんなと対等に戦えるくらいにはなりたいし、頼られたい。」
オムレツを食った後。
更に、パンを齧りながら美咲が呟く。
さっきまで皿の上のモンを静かに食っていたかと思ったら、ベッドに移動してくるやいなや、彼女は物凄い勢いで心情を吐き出した。
少しの弱音に混ざり、意志の強さが垣間見れる事が、何とも彼女らしい。
美咲の言うことは、同じ同期としては、もの凄く理解出来るものだった。
自分だけがリヴァイ班に選ばれなかった疑問。
ハンジさんからの期待。
無茶な期限付きの資料整理。
俺と置かれている立場は違うにしろ、こんなにやりきれない思いをしていたとは。
労働ですり減らしていたのは、自分自身の律儀な主義、そして、俺達と同期だという意地とプライドだけだ。
調査兵団のこと、今の仕事の内容、そして資料のややこしさと、美咲の性格。
それを考えてみれば、今回の美咲が身を削っている事は容易に想像が出来た。
今の美咲の心情と状況を、ちゃんと分かってやれるのは、俺しかいない。
……そう思うのは、自惚れだろうか。