第8章 秋は夕暮れ②
荒北がそう考えた時、苦しそうながらも巧が口を開いた。
「そういえば君は、、、」
「ア?」
苦しそうな表情の割に巧は笑顔を絶やさなかった。
荒北は少しイラッとしながら答えた。
「沙織とは、したことあるんだったよね?」
「ッ!!し、、、したワケあるかァ!!!フザケたこと言ってンなヨ、オッサン!!」
突然の質問に荒北はイスから落ちそうになった。
瞬間力の抜けた荒北の腕を巧が押し戻した。
何、、、考えてンだヨ!こンのエロオヤジは、、、!
っつーかアイツのことそんな女だと思ってたのかヨ!!
荒北は巧を睨みつけた。
「えっ?」
すると巧は不思議そうな表情を返した。
「エッ、、、?」
思いもよらない巧の表情に荒北は目を瞬かせた。
「あぁ、、、」
その荒北の表情を見て巧は何かを悟ったかのようにニヤリと笑った。
「えっと、その“した”じゃなくて、腕相撲の話なんだけど、、、!」
「ッ!!!」
荒北の腕から再び力が抜ける。
その瞬間を巧は見逃さなかった。
ギリギリのところで荒北は耐えた。
巧が意地悪そうに笑った。
「はは、やっぱり若いね。でもちゃんと集中しないと負けちゃうよ?」
ちょこんと巧は首を傾げた。
「ウッセ!テメェがややこしい聞き方すっからだろーが!!!」
荒北はなんとか巧の腕を押し返して元のポジションまで持ち直した。
腕の筋肉が悲鳴をあげた。
巧はニコニコと笑っている。
このオッサン、、、!
余裕かよ!!
荒北は奥歯をギリリと噛んだ。
「フーン、、、」
そんな様子を巧はニヤニヤしながら見つめていた。
「ちなみにだけど、、、僕と沙織はしたことあると思う?」
「ア?腕相撲くらい、あんだろーが。アイツは何かとふっかけてきやがるし、、、」
今度は引っかからねーぞ、、、。
荒北はワザと腕相撲というのを強調した。