第1章 【海堂悲恋】結局君が、大好きで…
「え…?」
「好きだ。」
結菜のまだ潤んだ瞳を真っ直ぐに、逸らさず見つめる。
こんなとににも抱き締めたくなる本能を、理性で圧し殺す。
結菜は、俺の彼女じゃない。
「それならどうして…」
結菜も、応えるように俺の瞳を見つめてきた。
「悪かった。俺は、お前と付き合ってる桃城にしっ…………、仲良くしてるお前らを見る事がいやで、辛くて…避けた。」
嫉妬、そんな感情だと気づきはしたが、認めたくはなくて言葉を濁した。
「そっか…」
「でも、もう迷わねぇ。もうお前を傷つけたりしねぇ。避けたりなんかしねぇ。」
「…ありがとう。気持ち、すごく嬉しいよ!けど、桃ちゃんが好きだから…」
「わかってる。」
結果なんかわかってた。
涙を堪える俺に背を向けて、背中越しに聞いた結菜の優しい言葉。
「泣いてもいいよ。私、見ないから。」
その言葉をキッカケに、頬には一筋の涙が流れた。
この時、結菜がまた、今度は静かに泣いてたことを俺は知らない。