第10章 11月『王子様の超越』
「…………さぁ、今日はいよいよ本番だな。
全員の力を合わせて頑張ろう!
えい!えい!おーーー!」
「「「おーーー!」」」
「………………おー。」
僕も皆に合わせて軽く返事をした。
真田先生はどこかのテニスプレーヤーのように
暑苦しい真田先生はいつもより三倍増しで
気合が入っている。
クラスメイトもそれに乗せられて
気合十分だ。
僕は…あくまで冷静だけど。
僕らの劇の順番は、
前から3番目の中盤だ。
最初とか、最後とかじゃなくて良かったが、
客席を見ると、席いっぱいに観客が
座っていて驚いた。
女子が多いのは気のせいだと思いたい。
「レイ〜〜ッハグッ!!」
「うわっ」
後から誰かが重く持たれてきてふらついた。
まぁ、大体想像はつくけどね。
「あ!悟郎!………ってなんだよその服!」
「えっへへ〜ウエイトレスだよ!
可愛いでしょ?」
真田先生がウゲッと悲鳴と混ざった声を出す。
悟郎の服は白に黒いエプロンで、
下は短いスカート。
ふわふわして可愛いのに
中身は男なんだから、世の中は不条理だ。
「そんな事よりレイ!
メイクのお時間〜!
今日はいつもの二倍増しでやっちゃうよ!」
「……はいはい…。じゃあ、またあとで。」
僕がため息をつくと、
悟郎は僕の手を引いて更衣室に入った。