第10章 11月『王子様の超越』
「……し…失礼しまーす。」
「…………!」
誰かがClassXの扉を開ける。
君は、慌てて翼君の後ろに隠れた。
「……………フン。」
翼君は心無しか自慢げだ。
よく分からないけど。
「………、いるか?」
……噂をすれば、だ。
入ってきたのは真田先生だった。
「……君ならいますよ。ね?」
「………………。」
君は口をへの字で閉じてしまい、
翼君の後から少し顔を出した。
巣穴から覗くウサギのようで可愛い。
「……そっか。
B6といるなら大丈夫そうだな。」
申し訳なさそうに苦笑いする真田先生。
体育館での事を気にしてるみたいだ。
「……明日は、終わったら
裏口から体育館出ろよ。
そうすれば、大丈夫だから。」
「…………………。」
君は黙ってコクリと頷いた。
真田先生の顔の緊張が少しだけ解けた。
「…………マサちゃん、
白雪姫の子、大丈夫だった?
ちょっと…レイが
勘違いされるような事しちゃった
みたいだけど。」
「ああ、あのキスの話か?
その子、緊張してその時の事は
よく覚えてないんだってさ。
他の生徒がやるわけないって言って
終わったから大丈夫だと思うけど。」
「………そっか。それならいいけど。
レイ、ちゃんと明日謝っておきなよ?
オトメゴコロを傷つけたんだからね。」
「…うん。分かった。」
悟郎君が君に釘を刺す。
それにしても、白雪姫の子、
あんまり覚えてなくて良かったわ。
もし本気にしていたら………。
一君が憤死しちゃうもの。