第5章 ♡甘い快楽と苦い花
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パサッ、バサッ...
『ふぅー......
洗濯物、けっこう量あるでしょ?
めるちゃん大丈夫?疲れてない?』
洗い終わったシーツを竿にかけながら
羊はめるに問いかける。
「あ、ありがとうございます!
大丈夫ですよ!」
洗濯物の爽やかな香りに癒されながら
ぐーっと背筋を伸ばし答える。
「それにしても、羊さんと花臣さんって
すごく仲良しだったんですね…!
一応立場...とかあるのに、
あんなにフランクで大丈夫なんですか...?」
『ははっ、びっくりした?
んー...本当はダメなんだけど......
はなも俺も“あれ”の方が気が楽だから。
それにまぁ、さっきも言ってたけど
公の場ではちゃんと敬語、様呼びだよ』
「そうなん、ですね...!
長い付き合いってことは
羊さんはそんな、かなり小さい頃から
こちらのお屋敷で働いていたんですか?」
『え?う、うーん......
まぁ、そんな感じ』
その質問に、羊は少し目を逸らし
困ったように笑った。
(あ...もしかして、
あまり聞いてはいけないことだったのかな......?)
羊が言葉を濁すのは初めてのことで、
気を遣わせないように
めるは焦って違う話題を振る。
「あ!あと、暫く雪臣さんもいらっしゃらないってことですよね?
花臣さん、さっきもちょっと寂しそう?だったし...
1人ではそりゃ心細いですよね...!」
『え?雪臣様も?どうして?』
羊は不思議そうに頭を傾げる。
「え......だって...ご主人さ...月臣さんがいらっしゃらない間の仕事の引き継ぎを三男の花臣さんがするってことは、次男の雪臣さんもその間いらっしゃらないってことでは......?」
その質問に、羊はさっき以上に顔を強ばらせ
目を逸らす。
『......あー.........、そう...だね......』
「あ......」
またいけないことを聞いてしまっただろうか、
めるは何を喋ればいいのか分からなくなり
焦って口を噤む。
「す、すみません...!
あの、気にしないでください...ごめんなさい...!」