第5章 ♡甘い快楽と苦い花
『え...』
その瞬間、一瞬にして花臣の顔が曇った。
『ごめんね、はな...。
...月臣様からも、なるべく早く帰ってくるし
大きな仕事や客人の相手は済ませてあるから
そんなに心配はするな、と言われてる。
.........それから......“ごめん”とも』
『......そんな、月にぃが謝ることなんて
何もないのに...。
...うん!よしっ!』
少しの間暗い顔になった......と思ったら、
すぐにぱっといつもの笑顔になる。
『はな...っ』
『おっけおっけ☆
わかったよ!月にぃのところに行ってくるね!』
にこっと笑って駆けて行く...
そんな花臣の手を、羊が急いでぎゅっと握った。
『ひーちゃ...?』
『はな、笑わなくていい。
俺を頼って。
今も昔も、いつも、ちゃんと傍にいる。』
いつになく真面目な顔で
羊は花臣を見据える。
『.........』
すると、花臣がくすっと笑った。
『...ふふっ、わかってる。
ありがと、ひーちゃん』
その言葉を聞き、
羊は安心したように小さく笑って、
花臣の手を離しその背中を見送った。