第5章 ♡甘い快楽と苦い花
すると、花臣の動きがぴくり、と止まった。
『あれ?今のって、ひーちゃん?』
「え...?」
シャツを着ながらこちらに向くと、
不思議そうに問いかけてくる。
「あの...ひーちゃん、って...?」
『あー、そか!ひーちゃんじゃ分かんないよね。
えっと、花眩 羊!羊だからひーちゃん!
今の、その彼の声じゃなかった?』
その説明を受けて、
めるは“ひーちゃん”を理解し、小さく頷く。
「あ、そうです...!
でも、花臣さん、執事さんの1人1人の名前まで覚えていらっしゃるんですか?
かなりの人数いらっしゃるのに...」
『え?!そんなことないよ!
さすがに僕でも全員の名前なんて覚えられないって。
それに、執事やメイドの雇用状態は月にぃしか詳しいことは知らないし...』
「え?じゃあ...えっと...?」
めるが不思議そうに首を傾げると
花臣は一瞬目を逸らし、考えるような仕草をしたが
すぐにこちらに向き直り
ニコッと微笑み口を開いた。
『ひーちゃんはね、僕とは長い付き合いなんだ。
昔からすごく仲良しなの♪』
「あ...そうだったんですね...!」
確かに、花臣と羊は歳も近そうだし
明るい性格同士気も合いそうだ。
『でも、ひーちゃんとめるちゃんも仲良しだったんだね!
ひーちゃん、すごく優しくて元気ないい子でしょ?』
「は、はい!
仲良し...といっていいのかは分かりませんが…
よく朝食などを持ってきていただくんです。
それで、とても温かくて太陽みたいな方だなって」
そう言って花臣に向き直ると
目を丸くした彼と目が合った。
「あ、あれ...すみません...。
また私、何か変なことを......」
謝ると、花臣は、はっとすぐに笑顔になる。
『あ...いや...僕もずーっと昔から
ひーちゃんを太陽みたいに思ってたから...
だから、ちょっとびっくりしちゃった』
へへっ、と笑うと
最後にズボンのベルトを締め
めるに声をかける。
『めるちゃんも着替え終わった?
僕はもう平気だよー』
「あ...!はい!
じゃあ、開けちゃいますね...!」