第8章 ♡その想いは甘く優しく、そして我が儘で
『.........寂しいって言ったら...
一緒にいてくれるの......?』
耳もとで、とても辛そうに
ぽつりと呟かれたその言葉に、
めるは小さく声を漏らす。
「え.........」
『......寂しい』
状況が飲み込めず、
その場を動けないめるの肩に
雪臣はこてん、と後ろから顔を埋める。
『.........』
「.........」
少しの間沈黙が流れる。
ー長いとも短いとも言えない、
2人だけの不思議な時間が流れると、
雪臣がゆっくりと体を離した。
『.........ごめん。
...今のは、忘れて......。』
そのまま人影が遠ざかっていくのを感じ、
めるは急いで振り向き声を出した。
「わっ...忘れません...!」
その声にぴくりと肩をゆらすと
彼は後ろを向いたまま足を止める。
「......忘れません。
だから...」
『......』
「...寂しい時は、言ってください。
私でよければ、一緒にいます。
雪臣さんは、いつも...
無理をされてるように見えるから...
今も、辛いんですよね...だったら......私...」
『冗談。......今の。』
雪臣は、めるの言葉を途中でむりやり途切らせる。
「...っ......」
『でも......』
ふわりと心地よい風が一瞬頬を掠めた、
その時、雪臣がゆっくりとこちらを振り返った。
『ありがとう』
その表情は、
今まで彼が自分に向けてくれたその中で、
1番柔らかく、そして......
なぜだか、1番悲しげなものだった。