第6章 ♡飼い主不在のペットには
『.........すみません、開けますよ?』
いつもの紳士的な声で言葉を掛け、
凌は鍵を開けてゆっくりと扉を開ける。
と、扉の前にいた人物に目を丸くした。
『......は?
......は、花ちゃん?』
「え......?」
凌の、その不思議そうな声に誘われ、
ベッドから扉の向こうを覗き込むと
花臣の顔がちらりと見え
めるもまた、不思議そうに目を瞬かせる。
『どうしたの花ちゃん?
なんか、外からすごい音してたんだけど...』
『ん?しのにぃが家に来てるって小耳に挟んだからご挨拶しにきただけだよー!
そしたら、まーた部屋に女の子連れ込んでるから
たまには邪魔してみようかなって♪』
『邪魔って......花ちゃん、そんなことしたことなかったじゃない。
なんでよりによって今回かなぁ......。
いっちばん邪魔しちゃ駄目な子とシてたんだけど?』
『えー!そうだったの?!それはごめん!
でもなんとびっくり!
実は、僕にとってはそれ、逆なんだ♪』
『...逆?』
『......いっちばん邪魔しなきゃ駄目な子...。
.........ふふ、なんてねー♪』
『.........』
『.........』
2人は無言で数秒見つめ合う。
ー先に口を開いたのは、凌だった。
『...つまり、飼い主は2人いたってこと?』
『...飼い主は1人だよ。
でも、例えば忙しくて留守の多い飼い主より、
よく家の前を通りかかる近所の子どもの方が
“その子”に愛情を抱いている...
なんてこともあるものでしょ?』
『.........なるほど。
さすが秀才。
花ちゃんの例え話はわかりやすいね』
『それはどうも♪』