Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第14章 傷跡
「そんなんだから、まあ……単に心配だったんだよ。調査兵団ではちゃんと仲間とやっていけてるのかってな。訓練兵団の時、同期ともいざこざがあったらしい……フィデリオが手紙で少し教えてくれた」
同期との揉め事。一体何があったのだろうかとその話も聞きたいが、本人の許可もなしに流石にそこまで踏み込むわけにはいかないだろう。
リヴァイは言葉を飲み込んだ。
「ハンネスさん、その同期との揉め事って……もしかして女子同士ですか?」
ハンネスの話で少し気になった点を見つけたアンカは、難しい顔で尋ねる。
「ああ、そうらしいが……よく分かったな」
「そりゃあ分かりますよ。エミリ達の年頃の女子って特にそういうの多いですし、かなり面倒ですから」
アンカはやれやれと溜息を吐く。どうやら彼女もエミリの歳くらいの時、色々と苦労をしてきたようだ。
彼女の疲れたような表情から伝わってくる。
「その様子だと、アンカも色々と大変だったみたいだな」
「ええ、かなり」
「女子ってそんなに大変なのか?」
「グスタフも一度体験してみたら分かるわ。本当に嫌になってくるから」
当時を思い出しているのか、アンカの表情が曇り始めた。同時に、酒を飲むペースも少しずつだが早くなってきている。
「女って怖いんだな……」
「ええ、すごく」
同じ女でも怖いと思うのだから、男が女の戦争を見たら怖いどころのレベルで済む話じゃないだろう。
「アンカ、男の夢を壊すような話をされると困るんじゃがのう……」
「司令は美人だったら誰でもいいんじゃないですか」
「ははは、いつにも増して辛口じゃな」
酒を飲みながらヘラヘラと笑う上司に、アンカは深く息を吐いた。
女なんてほとんどが猫を被った生き物なのだから、男が女の怖さを知る機会などあまりないだろう。
美人が好きなのは良いが、アンカは酔っ払ったピクシスがいつか変な女に引っかからないことを祈った。