Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第14章 傷跡
「……なあ、エミリのことで聞きたいことがあるんだが……」
ハンネスは空になったグラスを机へ置き、リヴァイとエルヴィンへ向き直る。
そんなハンネスの頬は酒のせいで赤く染まっているが、彼が浮かべる表情はとても真剣なものだった。
「何だ?」
彼の顔つきとエミリのことで、という話にリヴァイは目を細める。
「……あいつ、調査兵団に入ってからフィデリオ以外に仲の良い友達とかできたのかと思ってな」
「……! ああ、居る。二人な」
ハンネスの言葉に少し驚いたリヴァイは、目を丸くするもすぐにいつもの無表情に戻る。頭の中に、いつもエミリとフィデリオと共に行動しているペトラとオルオの顔を思い浮かべ、返した。
「そうか。なら良かった」
「……何故、いきなりそんな事を?」
安堵の息を吐くハンネスに、エルヴィンがグラスに口をつけながら問い返す。
わざわざ聞かなくても、何となくだがハンネスの言葉から想像はついていた。けれど、ちゃんと彼の口から事情を知りたいと思ったのは、エルヴィンもエミリが心配だからだ。
「…………あいつは、小さい頃から友達作りが苦手でな。よく、一人で遊んでいたんだ」
昔の記憶を引っ張り出し、グラスに酒を注ぎながらハンネスはエミリの昔話を始める。
「不器用だから、友達とどう関わっていいか分からなかったらしくてな。近所に居るのもクセのある性格のガキが多く、エミリとも意見が合わずでフィデリオ以外の遊び相手はいなかった」
エミリと同様にエレンも友達がアルミン以外居なかった。
だから、姉弟二人で遊んだり散歩に出かけることが多く、また、フィデリオやアルミンらと過ごす事しか無かった。
「エミリとフィデリオが一緒に居るようになったのも、一人で遊んでたエミリにフィデリオがちょっかい出し始めたのがきっかけだ」
そして、どうやらその二人は出会った頃から犬猿の仲だったようだ。
会う度にちょっかいを出していたフィデリオにエミリが突っかかるという構図ができ、気づけば二人は幼馴染という関係にまで発展していた。