Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第14章 傷跡
「……に、27分36秒です……」
少し膨れた腹を擦りながら幸せそうな笑顔を浮かべるエミリに、唖然としながら店員はタイムを静かに告げた。
さっきまで大皿に乗っていた大量のスパゲッティは、全てエミリの胃の中に入ってしまった。しかも、ちゃんと30分以内に。
「……マジで時間内に食べやがった……」
エミリの食欲の凄さを前から知っていたハンネスでも、流石にこれにはスゴいを通り越してドン引きしていた。
当然だろう。大人の男性でも時間内に完食できなかった量を15歳の少女がクリアしてしまったのだから。いや、最早彼女は少女と呼べるのだろうか。
「あ〜あ……目標は25分以内だったのに……」
「時間内に食べ切っただけでもすげぇよ!! 俺は絶対に無理だな……」
ハンネスは絶対という言葉を強調させ、大きく首を振る。脳内にはあの大盛りスパゲッティが浮かんでいた。
ちなみに、大盛りスパゲッティの重さは2kg以上だそうだ。
「お前、兵士なんて辞めて大食いチャンピオンでも目指せば?」
「それ、私に太れって言ってんの?」
ハンネスは冗談で言ったつもりだが、(一応)女の子のエミリには失礼な言葉だったらしい。
「そんなんだから、お前は女の子扱いされねぇんだよ」
「もう、うるさい!! 私が何をしようが私の勝手なんだから!! 大体ね、女の子らしくないからだとかそんな理由で去って行く男なんて、私は断固拒否!」
エミリのその言葉にグサリとリヴァイの胸に何かが刺さった。
さっき、ついついこんな女が好きかもしれないなんて、と内心失礼なことを思ってしまったからだ。
いや、でもこれは引いても仕方が無いだろう。などと言い訳をする。