Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第14章 傷跡
店員が次々と料理を机に並べていく。そして、最後にやって来たのはエミリが注文したあの大盛りスパゲッティだ。
大皿に乗せられた山盛りのスパゲッティ。エミリは目を輝かせているが、実物を目にしたリヴァイ達の表情は固まっていた。
「……でけぇな」
丁度向かい側に座っているハンネスから見ても、大盛りスパゲッティの存在感は圧倒的だ。
本当にコレを30分以内に食べ切ることができるのだろうか。
「それでは、時計の長針が4を指したら始めましょう」
つまりもうすぐ19時20分になる。30分以内ということは50分までに完食しなければならない。
ちなみに今は開始3分前だ。
「お腹空いた〜早く食べたい!!」
「後もう少しの辛抱だろ」
ハンネスは呆れを含んだ溜息を吐いて、グゥーと腹の虫を鳴らすエミリを宥める。
どれだけ成長しても、彼女のこういう所はまだまだ子供に見える。
「さて、それではいきますよ」
エミリはサッとフォークを構えて、目の前の大盛りスパゲッティを睨みつける。
「よーい…………スタート!!」
店員の合図でフォークに素早くスパゲッティを巻き付けたエミリは、大きな塊を作りそれを口の中に入れては吸い込んでいく。
一口がデカい。
周りで観戦している者達は内心そんな事を思いながら、見ていても仕方が無いのでとりあえず自分達に運ばれてきた料理を食べる。
スルスルとパスタを吸い込んでいくエミリは、きっと食べ物達からしたら彼女が巨人に見えてもおかしくない、かもしれない。
「おいひい〜」
幸せそうな笑みを浮かべながらどんどん大盛りスパゲッティを腹の中に吸収していく。これは時間内に完食できるかもしれない。
もしこれが普通のサイズのスパゲッティで、時間制限があれば、何分で食べ終わるのだろうか。というか、何口で食べ切るのだろうか。五口くらいで完食できるんじゃないだろうか。
色々とツッコミを入れたくなったが、何も言わずにただエミリがパスタを頬張る姿を眺めていた。