Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第14章 傷跡
「そのすぐ手が出る癖さえなければ、もっと男にモテるんじゃねぇのか?」
「べ、別にそんなの気にしないもん!」
ピタリ。
酒を飲もうとグラスを口元へ寄せるリヴァイの手が止まった。
「なんて言うが、本当は気にしてんだろ?」
「気にしてないってば!!」
「どうだかなぁ……じゃあ、お前これまで何回告白されたんだよ」
「ちょっと……! 本当にいい加減にしてよ……そんなの今言ったってどうにもならないでしょ!?」
悪ノリが増してきたハンネスに、エミリは顔を真っ赤にして怒鳴る。それでもハンネスはグラスを片手に話を止めない。そんな彼の頬はほんのりと赤く染まっており、確実に酔っていることが伺える。
「そう言うってことは、やっぱ告白されたこと無いんだろ?」
「そ、そんなことない!!」
ガタン。
グラスを机へ叩きつけるように置いたのは、ギャーギャー騒ぐエミリの隣に座っているリヴァイだった。
普段、無表情なその顔は眉間に皺が寄っている。何やら機嫌が悪いようだ。
「へぇ〜じゃあ、何回だよ?」
「……そ、それは……」
「やっぱり無いのか」
「…………4回、くらい……」
結局ムキになって言い返すハメになってしまった。しかし、この4回という数字は嘘ではなく本当なのである。
しかし、ハンネスはそれを分かっている上で続けた。
「いつもの強がりじゃねぇのか?」
「失礼ね! 本当よ!!」
カラン。
リヴァイが強くグラスを握りしめる。そのせいで、手の中のグラスが揺れ、氷同士がぶつかり合い涼し気な音を奏でた。
「意外だなァ。暴力女なんて言われてる割には大した数字だ」
「なんかすっごく貶されてるようにしか聞こえないんだけど?」
言い合いを続けるエミリの隣で、リヴァイは静かにグラスの中へ視線を落としていた。
そんな彼の様子に、エルヴィンとピクシスは顔を見合わせフッと笑った。
「お待たせしました〜」
その時、丁度厨房から食事が運ばれたため、エミリも一旦席に着き治した。