第69章 咲く恋、散る恋、芽吹く恋(宮侑 治)⑤
〈…せやな!
ほな…明日の朝
頑張って早起きするから〉
「頼むで?これでブッチされたら
俺のメンタル死ぬからな!」
笑わせたかった
笑いたかった
こんな痛い気持ちの時に
一人は嫌やった
更新されへん
姫凪とのトーク画面を伏せる
「アホ…俺からLINE来ンかったら
いつでもアホみたいな絵の
笑けるスタンプ送って来てたやろ
なんで…今日に限ってナイんよ…
考えたくない事ばっかり
考えてまうやろがい…」
そのまま朝まで何回も目が覚めて
携帯を手に取ってみるけど
ヤッパリトーク画面は
少し前の赤い絵文字で止まったまま
メッセージも変なスタンプも
届いては居なかった
[すまん、今日一緒に行かれへん]
ひとつだけ浮いたメッセージが
また溜息を誘う
制服に着替え
朝食代わりのウィダーインゼリーを
吸いながら玄関に向う俺の背中に
治の声
「なんや、もう出るんか?
今日朝練ない日やで」
「…知っとる。
急いどるから、ほなな
…あー、治…サクラの事やけど…
なんか変わった事ないか?
様子とか普通か?」