第11章 管理人と特訓
『じゃあ、最後にもう一つ』
「はい」
『貴方の名前を教えて』
そう、この人の名前を私達はまだ教えてもらっていない。
「....名前は..ありません」
『..ない?』
目を閉じて淡々と答える男の人を訝しげに見つめる。
「はい...ハゴロモ様に呼ばれていた名前はありました..ですが、その名はあくまでハゴロモ様に遣えていた時の私の名前..」
つまり、私に遣えている今はその時の名前ではちょっと違う気がする..と?
「ツバキ様」
『?』
「私に名前をつけてはくれませんか?」
『え』
急なことに固まる。
「私は貴方のものです、貴方に、名前をつけてもらいたい」
『.....そうだな..』
真剣な目で見られては何も言えず、顎に手を当てて考え始めた。
うーん、中々難しいな..父さんはどうやってつけたんだろ
唸りながら考えていると、シスイに頭を撫でられた。
『シスイ?』
「深く考えすぎなくていいんじゃないか?お前がいいと思う名前を..ゆっくり考えればいい」
『いいと思う...』
その言葉に、男の人をジーっと見つめる。
すると、頭の中にある名前が思い浮かんだ。
これは.....何だろう?すごく、しっくりくるけど..私が考えたというよりは..記憶が流れ込んできた感じ...
その名前を、とりあえず口に出してみる。
『...アズサ』