第10章 暗い月夜
「っ!?...」
『.....』
倒れて動かなくなった両親を見下ろす。
涙は、出てこない。
「姉さん...何で」
呆然と私を見つめるイタチの方を無表情のまま見る。
『...イタチ、私が、貴方にばかりこんな重たいものを背負わせるはずがないでしょう』
小さく微笑み、そう言うと、イタチは目を見開き、俯いた。
「この任務のことを...知ってたのか」
『.....うん、知ってた』
「..もう、帰ってこれなかったんだ..この家に...うちは、イタチとして」
涙を流しながらそう言うイタチの頬にソッと触れようとする。
「触るな!」
弟からの、初めての拒絶...
それなのに、悲しくはない。
「俺は...姉さんに、甘えていい人間じゃない」
『...いいや、甘えなさい』
イタチが私の方を見る。
『イタチが甘えてこないのは私が寂しい』
「.....」
『それに、私は、“この家”にまた帰ってきてほしいからあのとき、いってらっしゃい、って言ったんじゃないよ』
「?」
『...また、帰ってきてよ...
“私の隣に”...』
「!」
『確かに..この家に、うちはイタチとしては、もう二度と帰ってこれない...けど、私の側には、またうちはイタチとして帰ってこれるでしょ?』
「姉さん...」
『貴方の隣が、私の帰る場所...私の隣が.....貴方の、帰る場所..そうでしょ?だって私達は...
双子なんだから』
そう言って、さっき、私から遠ざかったイタチに静かに近づいていき、ギュッと抱き締めた。
今度は何の抵抗もしないイタチ。
「...全く..姉さんには、敵わないな...」
そう言うと、イタチはポロポロと涙を流しながら私に抱きついてきた。
『...おかえり、イタチ』
「ああ、ただいま...」