第10章 暗い月夜
「...ツバキ、いるのだろう?」
名前を呼ばれた。
静かに部屋に入る。
「姉さん...」
涙を流しながら私を見る弟に優しく微笑む。
「...お前も、むこうへ付いたのか?」
『...ううん、私は..考えたけど、答えがでなくて..結局、どっち付かずだったよ』
「...そうか..」
「お前のことだ...こうなることが、昔から分かっていたんじゃないのか?」
『.....うん、』
そう、分かっていた...
分かっていたのに...
『分かっていたのに...私は、みんなを止めなかった』
「...お前が止めようとしたところで、うちはは、止まらなかった..そうだろう?」
何も言わず、背を向けている父と母を見る。
「俺は..焦りすぎたのかもしれん..もっとお前達を信じ、一族を抑え、時を待てばよかったのかもしれん、」
「父さん?」
イタチが震えた声を出す。
「お前たちならば、うちは初の火影になれたかもしれん、一族の闇すらも払いのけ、里の偏見を打ち砕き、自分の実力で運命を切り開いただろうに..」
「だが、何もかも、もう遅い...」
「考え方は違ってもお前達を誇りに思う」
「お前達は..本当に優しい子だ。」
『父さん...』
震える声で、父を呼ぶ。
『...何度も、ケンカしたけど...私は、父さんの子供として生まれてきて...良かった』
『母さん...私、母さんの笑顔にたくさん救われた...あんまり女同士で話したりする事はできなかったけど...すごく、幸せだったよ』
母さんの肩が震えている。