第1章 最後の時
壁外調査へ発つ朝、
纏めた荷物の一番上に遺書を置いた。
施設の皆へ向け書いた物だ。
改めて、育ててくれたお礼と。
送り出してくれた時の感謝の気持ち。
一生懸命編んでくれたミサンガは、少し長さが足りなくて。
可愛い人形に結んで、ベッドの上にいつも飾ってた。
施設の皆を描いたという絵は、ベッドサイドに貼っていつも眺めた。
落ち込んだ時、沢山の元気を貰った。
泥団子は、荷馬車の中で崩れてしまったの。
でも、その砂を集めて空き瓶に入れて飾った。
実は中にガラス玉が入っていて。
キラキラと輝くそれは、きっと宝物だったろうな。と、暖かい気持ちになれた。
そしてお母さんへ
残した荷物を押し付けてごめんなさい。
量はそんなに無いけれど、服は裁断して何かに使って欲しい。
買ってみたけど、気恥ずかしくて使えなかった化粧品。
妹のごっご遊びにでも使って欲しいな。
真剣に頬紅を塗る姿は、可愛いに違いない。
お金も、僅かだけれど受け取って。
使い方は任せる……けれど1つだけ。
何か1つで良いから。
お母さんの欲しい物を買って欲しい。
あの時のサンドイッチ。
とっても美味しかった。