第4章 04
どれ、胸中で問い掛けながら手紙の内容に目を落とす。
軽く読み終えた私は誰もいないことを良しとして思い切り顔を顰めた。
女性らしい繊細でいて綺麗な文字で綴られた手紙の内容が、私にとってあまり歓迎出来ないものだったので、反射的に浮かべた表情とも言える。
手紙を読む限りでは、母はやはり出掛けているらしい。
一緒に出掛けている相手は赤司母。
二人は今も仲良く、こうして共に行動することが多い。
買い物やら映画やら、旅行といった少しの遠出をする時もある。
こういった時は決まって言われるのだ。
食事は征十郎くんと済ませてね。
当たり前に言われ、当たり前に今までそうしてきたけれど、今の私にはしんどい。
彼への気持ちをなくすためにも距離を置きたいと考えているにも関わらず、二人で食事をする空間なんて望んでいない。
父親たちはこういった時仕事帰りに各々外で済ませてきてしまう、というのも帰宅時間が不確かな父を待つことなく子供は子供で先に済ませる機会が多いため今でも継続されているこの、母同士、子供同士、父等は各自といった家族独特の風習が今日も見られようとしている。
なんということだ。
中学三年の夏、こういった関係も今年で十五年目になる。
慣れないわけもなく自然と受け入れている生活だが、今日は拒む理由を必死に考えた。
夏休みに入って赤司は中学生最後となる部活動に勤しみ、私は受験勉強に励むべく部屋に引き籠っている。
顔を合わせずに過ごす日々に安堵していたというのに、ここで食事を共にする、それも二人きりの空間に身を置くなどご免被りたい。
顔を見れるのなら勿論嬉しい。
けれど叶うことのない想いに縋るのはやめると決めた。
例え忘れることが出来ずとも、諦めることは時間が手伝って可能にしてくれる。