爆乳政治!! 美少女グラビアイドル総理の瀬戸内海戦記☆西海篇
第5章 悪意 中國山地
亀井の長々とした話を袖にして、三沢は傭兵達1人1人の顔を比べ見ていた。大坂中央では兵力への不安から傭兵や高給を餌に建設労働者や肉体丈夫な失業者達を入隊させる等の努力をしていたが、多くの兵にはどこか浮世に腕を引かれている面相があり、元赤軍出身の古参兵達に士気や覚悟の面で劣る所があったのだが、ここにいる傭兵達にはそれがない。無感想な表情の一方で、目の奥にはある意味「ぎらついた」と言える、強い意志が秘められているようだった。僅かにいる日本人傭兵にもそれは同様である。彼らと一緒に運搬されて来たはずの日本人―と呼ぶのは少し気が引けるが―兵士は個人特有の事情でここには並べないが、この列に在る日本人とて決して面構えに見劣りはないのだ。三沢は頼もしく思った。
「―敬礼っ!」
ターリクの声が三沢を物思いから呼び戻した。演説が終わって、号令と共に腕を額の所まで持ち上げる動作も様になっている傭兵達から踵を返す亀井の顔はどこか安堵した表情であり、三沢は彼との共感を初めて持った。言っては悪いが、傭兵達の敬礼は大坂の威張り散らした若手将校やここにいる〈美人将校〉の周上尉より決まっている。共感にも至るというものだ。そう三沢は思った。
三沢による宇喜多からの祝辞や許、三好等の歓迎の弁が終わると、一行お待ちかねの(はずの)宴会場へと向かう…のだが、三沢は別件があるために宴会場に入る余裕がなかった。ターリクを先導として兵舎内運動場に向かう傭兵達を尻目に、三沢は別件に向かおうとしたが、ふと後背より声がかかった。
「オツカレサマデシタ」
甘い声のカタコト。周子珍である。彼女は日本語での会話自体はできるのだが、聊か発音に難儀している所があるのに加え、日本風の社交辞令を言い馴れていないため、この点は未だカタコトから抜け出せなかった。
「まだ、変な発音ですな、上尉」
「あれれ、まちがったかな?」
話し相手のせいか、敬語は使わない。そして、何を参考にしたのかは知らないが、彼女の日本語はくだけた表現が多い。大坂の方広院(ほうこういん)様が聞いたら、即修正物だろう。三沢は周の言葉を聞くたびにそう思った。
「なんとなく、イントネーションが違う」
「むむむ…。うぅーん、むず、むずかしいなぁ」