爆乳政治!! 美少女グラビアイドル総理の瀬戸内海戦記☆西海篇
第5章 悪意 中國山地
「ここから先が、敵地と言う訳か」
助手席にもたれ、白皙と呼べる肌の男がそう質(ただ)す。ありきたりなビジネスマンのジャケットを羽織り、ネクタイをせずに胸襟(きょうきん)をやや開かせてカッターを着ている男はシートベルトを乱暴に除けて皺が寄ったカッターとジャケットを整えた。上下のビジネスマンルックはどちらも新品だったそうで、男は少し気にしていた。
ハンドルに手を置いたままの浅黒い男は停車の措置を取りながら答える。彼は濃緑のT型のシャツにジーパンとスニーカーを着ている。ヨレの入ったシャツの下は汗ばんでいて、服の上に染み出ていた。
「津和野までがウチのエリアかな。須佐(萩)や徳佐(山口)は自信持ってそうだ、と言えん」
「だとするなら、ここは随分と弛んでいるな」
白皙の男の淡々とした言い草に、浅黒い男は少し困ったような顔をした。
「そうヅケヅケ言いなさんな」
「戦争なのだろう? スサやトクサは目と鼻の先と言っても良い筈だ」
「仮にも同胞さ。争うのは互いの御上と欲に目の眩んだ輩ばかり、そう思ってんのさ。まあ、本格的に始まったなら、もうちっとマシになろうがな。君の故郷…サラエボ(Sarajevo)だったけか。そこらとは違うさ。信仰も話し言葉も殆ど同じ、紛れもない同胞だよ。御上の違い以外はね」
浅黒い男はそう言って口元を綻ばせ、キーを抜いてベルトを外した。
「どこへ行く?」
「少し歩こう。そこに高台もある。なあに、心配はいらん。若い衆がそこらで見張ってる。君の息子達もそうだろう?」
「出来の悪い。悟られるなと言ったのに」
「それは俺を嘗めすぎだよ、セルビアン。これでも俺は『犬』暮らしが長いんだ」
呆れた顔の白皙を宥めつつ、運転席のドアを開いた浅黒の男は車外へ出た途端、陽射しに目を細めた。
「少し汗ばむが、ここを登ろう。見晴らしが良い」
「急な斜角だな。これまでとは随分違う」
白皙の男は首を斜め上に傾けて、天辺を眺めた。階段は幾重にも見え、その先は遥かに感じられた。浅黒の男は同じような姿勢になり、そのまま天辺を指差した。
「山城の跡地だそうだ。その上に神社を置いた」
「城の名は?」
浅黒い男は白皙の者の言葉に少し笑いをこぼした。
「君のお気に召したかね」