第3章 Love Distance
「あー、しくじったぁ。帰りたくねぇー」
生放送を終え楽屋に戻った大和は、失態を悔やみ嘆く。
「あいつら観てたかな・・・いや、観てないはずないわ~ぁぁぁぁ」
頭を抱える大和。
そこにドアがノックされる。
「大和くん、お疲れ」
大和の返事も待たずに千が入ってきた。
「・・・勝手に入って来ないで下さい」
「ノックしたけど?」
「返事してませんけど?」
「ハハッ。君は相変わらずだね」
「何の用ですか」
どこか冷たい視線を送る大和に構わず、千は椅子に腰掛ける。
「大和くんさ、さっき嘘ついたでしょ」
「・・・は?」
「嘘ではないだろうけど…相手を嘘ついた」
「いやいや、意味分からないんですがー」
「素直になりたい相手・・・IDOLiSH7じゃないんでしょ?今の君はIDOLiSH7に対しては充分素直だと思うんだけど」
千の言葉に黙り込む大和。
それは肯定の意味だった。
「・・・君って本当分かりやすい」
笑いながら千は言う。
「良い風に変わってくれたよね。あの子たちのお陰で。僕は嬉しいよ」
「・・・あなたは俺の親ですか」
「んー・・・せめてお兄さんがいいかな?ほら、お兄ちゃんって呼んでみて」
「呼びませんから」
ははは、と声をあげて笑う千。
そしてひとしきり大和を弄ったあと、おもむろに話し出した。
「僕らはアイドルだから簡単じゃないかもしれない。けど、どんな相手だろうが、僕は君が誰かを好きになれたことが嬉しいよ。後悔しないようにね」
「えっ・・・?」
優しい笑みを浮かべた千は、部屋を出て行った。
大和はそれを呆然と見つめていた。
「あの人、何知ってんだよ…」
意味深な言葉を残した千に、大和は身体を震わせた。
そのせいで、失態のことを忘れてしまっていた大和は、寮に戻り、起きていたメンバーに詰め寄られてしまったのだった。