第2章 恋ぞつもりて(土方side)
俺はもう一歩、彼女との距離を詰めたくて、土方スペシャルを見つめながら言った。
「なあ、芝居がはねたら、この前みたいに、酒の一杯でも飲もうや」
彼女の顔を見る勇気はない。
だが、すぐに、
「そうね。そうしましょ」
と答えが返ってきた。
思わず顔を上げる。
これはひょっとするとひょっとするんじゃねえか?
って、ひょっとするって何するつもりだよォォォ!?
俺は自分でツッこみ、顔を赤らめた。
彼女はさらにこう告げた。
「ねえ、土方さん。実はもう一つ相談があるんだけど」
「なんだ?」
「仕事を増やしてしまって申し訳ないんだけど、真選組の仕事に関係するクライアントがいてね」
「ん?どういうことだ?」
「あのね、夫が浮気している可能性があるから離婚したいっていうクライアントがいるんだけど、どうも浮気調査の報告を見るとね、その夫、攘夷浪士とつながりがありそうなの」
「浮気じゃなくて攘夷活動にいそしんでいるってことか?」
「どうもそうみたいね」
俺は早速山崎に電話をかけた。
「山崎、張り込みだ」
「え、張り込み?副長、今どこにいらっしゃるんですか?お昼に出てたんじゃ……?」
「急に入った情報だ。俺は今週内勤だと言われちまったし、お前に任せる。もし必要があれば、原田の隊を使えるようにしておこう」
「わかりました。詳しくお願いします」
彼女から得た情報を山崎に伝え、電話を切ると、彼女が俺のことを感心したように見ていた。
「今のが仕事モードの土方さんなのね。カッコいい」
そんな風に言われると、ちょっと、いや、かなり照れる。
「でも、仕事増やしちゃったから、明後日の夕方以降の約束、大丈夫?」
「大丈夫だ。このくらいのことなら、俺が出て行かなくてもなんとかなるだろう」
幸い、今週は内勤という大義名分を近藤さんにもらった身だ。
場合によっちゃ、大きな組織とのつながりを芋づる式にたどることになる可能性もあるが、そのときはそのときだ。