第17章 第3部 Ⅲ ※R-18
「アヴェンジャー、撤退を……」
言いかけた時は既に遅かった。巨躯が、此方へ向かって突進してくる。それだけじゃない。スプリガンは、手に持っていた棍棒を、こちら目がけて投げつけてきた。
「マスター!!」
アヴェンジャーに抱え上げられ、棍棒を躱す。私のいた場所は、壁の石が崩れたこともあり、瓦礫の山と化していた。
「ありがとう、アヴェンジャー……。」
「退路が塞がれた……!」
アヴェンジャーが、ギリリと奥歯を噛みしめる。
「……ぁ……。」
サーヴァントの力があれば、瓦礫を撤去するぐらい造作もないことだが、目の前にスプリガンがいる状況で、撤去作業など出来る訳も無い。つまり、このスプリガンをどうにかしないことには、撤退すら出来ないということになる。しかも、この狭い空間で、だ。
相手の重い一撃を躱そうにも、この狭い空間では、それもままならない。距離を取って戦うことも、不可能ではないが限りがある上、あまりにも距離を取ってしまうと、無力な人間である私が狙われた際に対処ができない。加えて、アヴェンジャーは強力なサーヴァントではあるが、防御系のスキルを持っていない。普段ならば、礼装のスキルでその辺りをフォローできるが、今はその礼装が無い。
明らかに、此方の不利な条件が整ってしまっている。この状況を切り抜けるには、早めに強力な一撃をお見舞いして、早々に勝負をつけてしまうことだ。しかし、アヴェンジャーに魔力を回そうにも、魔力パスによって魔力を送れないことに気が付く。私、また何もできないの……!?
アヴェンジャーは、和服を着ているとは思えないほど素早い動きで相手の重い一撃を幾度となく躱し続けながら、隙を見てその巨体に攻撃を加え続けている。しかし、なかなか有効打が与えられないのか、スプリガンの猛攻は止まらない。それどころか、スプリガンが暴れまわっている所為で、周囲の壁が崩壊し、視界や足場がどんどん悪くなってきている。これは、本気で早く決着をつけないと、不味いことになる。―――――それならば。
「アヴェンジャー、宝具解放!」
令呪に、魔力を込める。右手が痺れる感覚。どうやら、令呪は使えるようだ。