第17章 第3部 Ⅲ ※R-18
相変わらず何も見えないが、アヴェンジャーに手を引かれるようにして、扉を開ける。数メートル進んだところで、突然、灯りがともった。驚きのあまり、身体がビクンとなった。
「びっくりした……。」
「……人影を感知して、自動的に灯りがともる仕掛けだな。しかし、これは“アタリ”だ。」
「……うん。」
少なくとも、遊郭があった時代に、自動感知式の電燈などは無かったはずだ。とすれば、誰かが他の時代から意図的に運び込んできたか、或いは魔術的な道具ということになる。古風なランプが、微かに周囲を照らしている。どうやら、ここは通路のようだ。
「階段……?」
少し進んだところで、壁に突き当たる。しかし、そのすぐ右手には、階段がある。
「先行する。」
アヴェンジャーが、先を進み、私は後ろからついていく。高さにして、地下3階分ぐらいは下りただろうか。その先にも、同じような通路が続いているが、今度は距離のある通路のようだ。灯りがあるとはいえ、暗いので正確な長さまでは分からないが、50メートルはあろうかというほどだ。壁は石造りで堅牢な印象だが、兎に角狭い。足元から天井までの高さは、それなりに余裕があるが、通路の幅が狭い。恐らく、4メートルぐらいの幅だろう。その為か、上下に余裕があっても、通る者に窮屈な印象を与える。
「暗いし、ジメジメしてるね……。」
注意深く辺りを見回しながら、奥へと進んでいく。すると、突如として、地響きがし始めた。
「……!?」
「……ッ!」
アヴェンジャーが、音のする前方を睨み付ける。ドシン、ドシンと、何かが歩くような音。その音が近づくにつれ、足元も揺れた。
「な……!?」
やがて現れたのは、幾度か見たことのある敵性存在。石造りの巨躯に、同じく石造りの棍棒を携えた、大型エネミー。通称スプリガン。高い防御力と殲滅力を兼ね備えた、難敵だ。レイシフト先でも、幾度か襲い掛かられて、その度に被害を被った。耐久力の低いタイプのサーヴァントならば、その直撃を喰らえば一撃でも戦闘不能に追い込まれる。幸い、機動力が低いので、広い場所で戦闘を行う分には、それほど脅威ではない。しかし、この場所は最悪だ。狭い通路ではほとんど逃げ場がない。相手の攻撃を躱すことなど、ほぼ不可能だ。ここは、探索なんてしている場合ではない。相手が気付く前に、撤退するに限る。
