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恩讐の花嫁 【Fate/GO 巌窟王 夢小説】

第17章 第3部 Ⅲ ※R-18


「マスター。」
 不意に、アヴェンジャーに腕を引かれた。
「何者かが近づいてくるようだ。……、こっちだ。」
 私がいた場所のすぐ横にある、押し開き式の扉へと、身体が押し込まれる。扉は、アヴェンジャーの手によって素早く閉ざされた。押し込まれた時に、私はバランスを崩し、前のめりに倒れてしまいそうになった。地面で顔面を打つ前に、アヴェンジャーに支えられた。
「……静かにしていろ。」
「……。」
 木造の床が軋む音が、すぐ近くで聞こえる。アヴェンジャーが教えてくれた通り、誰かが近づいてきていたらしい。誰かに見つかってしまうところだったのだ。息を潜めて、立ち去ってくれるのを待つ。それにしても、暗い場所だ。物置部屋か何かだろうか。しばらく経つと、足音は遠ざかっていった。足音の主は、別の場所へ移動したのだろう。
「……ありがとう、アヴェンジャー。出よっか。」
 アヴェンジャーにお礼を言い、扉に手をかける。
「待て、マスター。」
「え?」
 アヴェンジャーは、扉と反対、空間の奥を見つめている。私も、目を凝らしてみるが、ひたすらに闇が広がっているだけで、数十センチ先に何があるのかも見えない。暗視魔術なんてモノも使えない私には、本当に、ただ暗いだけのこの空間。
「この奥に、扉がある。」
「よく見えるね……。」
「フン。独房内は暗かったからな。サーヴァントでなくとも、この程度の暗闇であれば、針に糸を通すぐらいは造作もない。」
「……。」
 そう言えば、『モンテ・クリスト伯』の小説内で、そんな描写があったような……。以前に、マシュが、私の為に、日本語訳された小説を持ってきてくれた時に、そんな描写を目にした気がする。
「どうする、マスター? 進むか?」
 私には相変わらず何も見えないが、これは明らかに隠し扉の一種だ。危険は伴うだろうけれど、内部を確認してみる価値は絶対にある。
「進もう。」
「クハハ! そう来なくてはな。」

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