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~愛ではなく、恋~【ハイキュー‼】

第6章 ~恋と恋の、あいだ~(松川 一静)



一瞬、じわり、と。

少しなげやり…というか、
寂しそうに見えたのは
気のせいだろうか。

こんな時、
"そんなことねーよ"って返事は、
余計な優しさに聞こえるのだろうか。
それとも、
社交辞令に聞こえるのだろうか。

どんな言葉を使ったら、
ちゃんと、気持ちが伝わるんだろう。

返事を考えている間に
綾ちゃんが訊いてくる。

『ん?ねぇ、それって、
晩御飯、食べてないってこと?』

『うん、食ってない。』

『今日はてっきり私一人だと思って
すっかり手抜きのつもりだった!
すぐ準備するから、お風呂、入っておいで。』

ソファーから立ち上がり、
エプロンをつけながら
キッチンに立つ綾ちゃんは、
いつものシャンとした後ろ姿。

俺は黙ってその言葉に従い、
いつもより少し長めに湯船に浸かる。
いろんなことを考えるのに、
答えも出ないし、スッキリもしない。

風呂から上がると、
テーブルの上に二人分の晩飯が並んでた。

『ゆっくり入ってくれてたお陰で
間に合った。さ、食べよ!』

牛丼。味噌汁。サラダ。
笹かまぼこのマヨチーズ焼き。
キャベツと挽き肉のカレー風味炒め。

『これ、今、作った?!早っ!すごっ!』

『ふふ、一応、主婦だったからね、
こういうスピード料理は得意よ!ま、
シンクは大変なことになってるけど(笑)
後でゆっくり片付ける。ほら、食べよ。』

いろいろ考えてたのに、飯を前にすると、
とたんに"腹減った"しか考えられなくなる
育ち盛りの俺。

『いただきます!』
『はい、どうぞ!』

もう、1ヶ月くらい食べてる
綾ちゃんの料理。
…1ヶ月毎日、同じ人の作る飯、食ったの、
もしかしたら初めてかもしれない。


『ホント、いい食べっぷりだよね。
見てて気持ちいいわぁ!』

『綾ちゃん、飯屋、やんなよ。
家庭料理に飢えてる単身サラリーマンとか
外食続きのお偉いさんとか、
うちの母さんみたいな仕事の女の人とか、
どっさり客がつくよ。俺も、毎日、行く。』

『さすが、
"夜の街"を知ってる子のセリフだわ(笑)。
でも、あたしのことより、
いっちゃん、自分の進路、考えなさいよ。
あたしなんか、
自分一人、食べられればいいけど、
いっちゃんは、未来がかかってるから。』

そうだ、それ。
飯食いながらなら、話しやすい。

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