第3章 2人の距離3
「お帰りなさい」
掠れた小さな声で言うと、ん。と言って立ち上がり寝室から出て行った
そして暫くして戻ってきた時には寝巻きに着替えていてシャンプーの香りがした。
和さんの寝る場所を確保する為に少し隙間を開けると和さんはそこに入り込み少し距離を開けた。
私がこうなってからは和さんからは迫って来なくなった。
でも私はそれが寂しくてその小さな距離も開けたくない。
和さんにそっと寄り添い胸に手を当てて頭をくっつけると優しく抱きしめ返された
「また震えてた。…夢?」
うん。と言うと、そう。と一言返された
夢の内容は、言えない。
いくら暴力を振るわれている夢だとしてもセックスしている夢
夢の中の私は苦しくて悲しくても、やっぱりあの時と同じように感じてしまっている
それがより苦しくさせている気がした。
目が醒めるといつも身体が火照っていて人の温もりが欲しくてしょうがなくなる。
こんな時に和さんがいるのはかなりキツい。
自分が止められなくなってしまうから。
こんな気持ちで和さんに触れたくないのに。
身体はいうことを聞かない。
見上げると和さんの首筋がすぐそこにあって思わずそこにキスすると少しビクついていた。
「ん?…どうした?」
そしてなんでもないように聞く和さんに黙って唇にキスすると優しくそれに答えてくれる。
触れるだけの簡単なキスだけじゃ全然足りない。
でもこれ以上進めない。
もしかしたら怖くなってしまうかもしれない。
もしかしたら感じないかもしれない。
そうなった時に和さんを傷つけるのが怖かった。
唇がそっと離れるとフフッと笑って頭をぐっと引き寄せられた。
「由梨最近積極的だよね。…足りない?」
多分夢から醒めた後必ずと言って良いほど自分から迫るからだろう。
足りないって感情が伝わってしまい少し恥ずかしかった。
「…私は全部和さんに答えてあげられるかわからないです」
出来るだけ顔を見ないように言った。
「それでも、もっとしてほしいって思ってしまいます」
私の話を聞くと和さんはフフッ。と笑っていた。
「う〜ん。そうだな。…でもそれってもう充分答えになってるけど」
和さんを見上げると凄く嬉しそうな顔をしていた