第14章 ゆらゆら
【天使と悪魔】
M side
楽屋でウトウトしている彼を見つめる。
椅子に凭れながら時々首がカクンカクンと傾く。
俺の片想いの相手・・翔くん。
何年も胸に秘めた想い。彼の前で気持ちが溢れてしまわぬよう表情を誤魔化すのにも慣れた。
今、楽屋には俺たち2人きり。
彼はグッスリ寝てるから・・だから許して?
そっと近付き、ふっくらした赤い唇に自分の唇を重ねる。
想像していた以上に柔らかい。
軽く触れるだけ・・起きてしまったら何て言い訳すればいい?
頭の中で自問自答を繰り返す。
上手い言い訳なんて浮かばないけれど、今は離れたくない。バレてもいいんじゃない?なんて悪魔の俺が囁く。
最初は軽く触れるだけのキス。
チュッチュッと繰り返すうちに
あんなに抑えていた感情が一気に溢れ出してしまった。
上唇、下唇を交互に舐める。
S 「んっっ」
微かに漏れた声。
薄く開いた唇を割り開き舌を絡める。
クチュクチュチュプ
完全に目を覚ました翔くんが驚いて俺を突き放す。
S 「じゅん?・・どうして?」
久しぶりに呼び捨てにされて、こんな状況なのに喜んでしまう俺はよっぽどだと思う。
「好きなんだ・・ずっとずっと」
一瞬驚いた顔をした翔くんの目がみるみるうちに真っ赤になり大粒の涙がポロポロと零れ出す。
俺は何て事をしてしまったんだ。今まで必死で隠して来たのに。今さら悔やんでも遅いのに・・。
「ごめん・・本当にごめん」
急いで楽屋から出ようとすると
ギュッと腕を掴まれ
S 「違うの!行かないで!
・・俺もずっとずっと好きだった」
嬉しいって小さく呟くと俺に抱き付いてきた翔くん。