第47章 ~47~
(なんでここにあいつが……いや、別人だよな……)
未だ続く動揺を必死に隠して、女達に今の女の事を聞いてみた。
「今のは……」
「ほら、安土のはずれにある老舗のお茶屋の娘よ」
「秀吉様のご好意を受けないなんて、失礼よね」
「秀吉様、あんな子は忘れて、遊びましょ?」
(外れの茶屋か……直接行ったことは確か無いな……)
「……悪い、仕事を思い出したから城へ戻る」
「えぇー、今日お休みじゃないの?」
「ああ、悪いな。仕事が片付いたらまた来るから、その時な」
俺が笑ってそう言うと、女達は素直に引いた。
仕事だと言えば、大人しく引き下がってくれるからありがたい。
だからこそこの中途半端な関係が続けられる。
決して女達に深くは入り込まないし、自分にも入り込ませない。
女達とそう明確に約束した訳ではないが、空気で感じ取ってくれるのか恋仲になろうとはどの女も真剣には言ってこない。
自分はもう、誰かを本気では愛さない。
そう決めてから数年が経ったが、未だにその気持ちは揺らぐ事は1度もなかった。
それなのに、今の女は……
女達に別れを告げて城へと引き返しながら、昔の事を思い出していた。