第45章 ~45~
茶屋へと戻ると、優鞠が先程の売り子さんと楽しげに話していた。
「優鞠、お待たせ」
「おかえり、あ、無事に買えたみたいね」
優鞠が私の帯飾りに気がついてにっこり笑った。
「あ、うん」
「おかえりなさい。お姫様」
売り子さんはそう言うと、私にお茶を入れてくれた。
「ありがとう……って、お姫様?」
「今、優鞠さんとお話していて、聞いたんです」
「姫じゃないんだけど……」
「表向きは姫でしょ?」
「まあ、そうなんだけど……」
「表向き……なんですか?」
「まあ、色々あって……。2人は友達だったの?」
「ううん。ちゃんと話したのは今が初めて。ね?」
「はい。私、人の顔を覚えるのが得意で。優鞠さんはよく店に来て下さるからお顔は覚えてたんですけど、貴方は初めて見たから……新しく入った城の女中さんかと思ったら、お姫様だっていうから驚いちゃいました」
「一応ね……。でも姫じゃなくて、って呼んでくれる?」
「はい。さん?」
「うん」
「私は清良っていいます」
「清良ちゃんね。よろしく」
「こちらこそ」
清良ちゃんは明るく笑った。
「さんは、暫く安土城にいらっしゃるんですか?」
「うん。」
「じゃあ、またうちに来てくださいね」
「うん。さっきの桜餅、すごい美味しかったよ」
「ふふ、良かった」
その時、別なお客さんが来た。
「あ、失礼しますね」
清良ちゃんは軽く頭を下げると接客しに行った。
「可愛い子だね、清良ちゃん」
「ね。茶屋の娘さんって感じ」
「ね。甘味もお茶も美味しいし、この店通っちゃいそうだな」
「ふふ、今度は政宗様と来たら?」
「うん、そうだね」
お茶を飲み終えて、支払いを済ませた。
清良ちゃんは眩しい笑顔で「また来てくださいね」と言ってくれて、ほんわかした気分で店を出た。