第45章 ~45~
「……そういえば、佐助くんが言ってた。市に幸……がいるって。」
「俺も佐助に言われてたんだよ。もしかしたらお前が訪ねてくるかもしれねぇって」
「そっか……(本当佐助くんはいい人だな……)」
「……その様子だと、俺に用があった訳じゃ無さそうだな」
「うん……あ、用はあるよ」
「あ?」
「これ」
私は手に持っていた帯飾りを差し出す。
「これください」
「……やる」
「え?」
「やるよ。もってけ」
「いや、だめだよ。売り物なんでしょ?」
「おー」
「いや、おー、じゃなくて」
「別に売上が欲しくてやってんじゃねぇ」
「そうかもしれないけど……」
「気にせず持ってけ」
「……ほんとにいいの?」
「おー」
「……ありがとう……(またおー、なの……)」
幸は私が帯飾りを付けるのを横目で見ながら、広げていた商品を片付け始めた。
「え、もうお店閉めるの?」
「ん。言ったろ、金の為じゃねぇ」
「……そう。あ、佐助くんは元気?」
「元気じゃねーの?」
「……そっか。(なんか適当だなぁ……)」
荷物を纏めると、幸は立ち上がった。
「……なんか佐助に伝えることあるか」
「……んー、特に今は大丈夫かな。もし近いうち会うなら、元気でやってるって伝えておいて?」
「おー。じゃあな」
「うん……」
幸は私がうなづいたのを見届けると、スタスタと人混みの中へ歩いて行ってしまった。
(……変な人っていうか……まあ私が織田軍にいるって知ってるから、馴れ合う訳にはいかないもんね……。)
帯でゆらゆらと揺れる帯飾りを見下ろした。
(……貰っちゃったけど、良かったのかな……。佐助くんに次会えたら、改めてお礼伝えてもらおう……)
とりあえず私も優鞠の所へ戻る事にした。
(……優鞠には言えないな……普通に買ったってことにしよう。)