第44章 〜44〜番外編③
着物も乾いて、昼餉のために城に戻った。
その前に部屋へと着替えに戻ると、女中さんに文を手渡された。
「誰からですか?」
「さぁ……先程部屋の前を歩いていたら、襖の前に置いてあったので……」
「……?」
「あと、城下から届いた反物でございます」
「ありがとうございます」
文と反物を受け取って部屋に入り、とりあえず机にそれを置いて着替えを済ませた。
「……誰からかな」
宛先には確かに私の名前が書いてある。
だが、裏返しても他には何もなく誰からなのかはわからない。
とりあえず中身を確認するために開くと、達筆な女性らしい文字で言葉が綴られていた。
「えっと……明日の朝私が帰る前に、誰にも言わずに部屋に来て欲しい……?あ、東雲さんだ……」
送り主は東雲さんだった。
光秀さんの不機嫌さと、東雲さんの不思議さを思い出して首を捻る。
「誰にも言わずに……行ったら怒るだろうな……光秀さん……」
光秀さんに怒られるのは嫌だ。
物凄い拷問を受けそうな気がして、寒気がした。
「でも……」
明日の朝を逃すと、もう東雲さんは京へ帰ってしまう。
もしかしたらまた来年、今回と同じ様に城に来るかもしれない。
だが、この時代、先の事がどうなるかなんてわからない。
私はちらりと反物を見た。
「……もう帰るんだし、挨拶してお礼したらすぐ部屋を出れば……」
私は文を机にしまい込んで、裁縫道具と反物を手に部屋を出た。
政宗の御殿へとついて、荷物を置くと政宗が不思議そうに私を見た。
「どうしたんだ、それ」
「……手拭いでも作ろうかなって」
「手拭い?」
「うん。すぐ終わるから」
「俺に気使うな、好きなことしてろ」
「ありがと」
昼餉をささっと食べ終えて裁縫道具を取り出す。
反物を丁寧に広げて手拭いのサイズに切り取る。
同じサイズで白い木綿の布も切り取り、右角に刺繍を入れる事にした。
(……この反物お礼にしたら、かなりしょぼいかもしれないけど……簪とか小物とか送っても良い物沢山持ってるだろうし……手拭いなら使えるよね……)
何を刺繍するか悩み、あまり時間が無い事を考えて、初心者の自分でも縫いやすそうな桜の花びらを縫い付ける事にした。
桃色の糸を針に通して、木綿の布に小さな花弁を縫い始めた。