第43章 〜43〜番外編②
「東雲さん、ありがとうございます」
「どういたしまして」
にこりと微笑んだ東雲さんの方が何故だか満足そうで、ますます疑問が膨らむ。
(……花魁だから……なのかな?女性同士でもボディタッチしたり……?うーん……)
私が東雲さんにバレないようにこっそり考えていると、また優しく手を引かれる。
「お茶でもしない?」
「そうですね、もうすぐお昼だし休憩しましょうか」
「ええ。あのお店にしましょう」
「はい」
相変わらず手を引かれたまま茶屋へと行き、腰をかけると東雲さんがお茶を2つ頼んでくれた。
「東雲さん……」
「なぁに?」
「……花魁って…大変ですか?」
「気になる?」
「……少し……あ、別に否定的な事は思ってませんよ?必要なお仕事だと思うし……」
「ふふ、怒ったりしてないから気にしないで。」
「はい……」
「私は……特に辛いと思ったことは無いわ。」
「へぇ……」
「でも、客の相手をしても楽しいと感じたことも無いの」
「それは……辛いからじゃないんですか?」
「んー……そうね……そういう感情はとっくに捨てたの」
「捨てた……?」
「ふふ、そう」
東雲さんは悲しそうに微笑んだ。
「私はね、幼い頃に今の店に売られたの」
「売られた……」
「特に珍しい話ではないわ。」
「…………」
「小さい頃から花魁として上に立つ為だけに育てられて、色んな苦労をして今日まで来たの」
「……大変……だったんですか?」
「最初はね。私を売った親を恨んだし、きつく当たる先輩や店の人間を恨んだわ。」
「……」
「そうしているうちに、苦しいとか辛いとかそういう感情が消えてしまったの」
「そんな……」
「そう悲観することでもないわ。辛さや苦しみが分からなければ、為すべきことをしていれば時間は過ぎ去る。」
「……じゃあなんで今そんな辛そうなんですか」
「……え?」
「笑ってるけど……辛そうです……」
「……ふふ、やっぱり貴方は優しい子ね」
「……そんな事ないですよ……」
「……」
「はい……?(今、呼び捨て……した?)」
じっと真剣に見つめられて、私は言葉に詰まった。