第43章 〜43〜番外編②
「は、はい。行きましょう……」
その時、私の目を見ていた東雲さんの目線が僅かに下がって私の首元をじっと見ていたことに気がついた。
「あの……東雲さん……?」
「ああ、なんでもないわ。行きましょう?」
「あ、はい」
東雲さんはさらっと私の手をひいて歩き出した。
(こんな可愛い子の綺麗な首に痕を付けたのは誰かしら……信長様じゃないだろうし……明智……?だとしたら、全く、嫌なやつ……)
私は不思議な人だな、と思いながら東雲さんと2人で市を歩いた。
途中、反物屋の前で足が止まり東雲さんに了承を得て、腰を下ろして物色させてもらう。
「私、今針子の仕事をしていて……まだ全然素人だけど、いつか着物作りたいんです」
「まあ、熱心ね。素敵だわ」
「そうですかね……あ、これ綺麗……」
「あら、ちゃん、こっちの反物の方が貴方に似合いそうだわ」
「あ、可愛いですね」
「ふふ、旦那さん、これお願い」
「あいよ」
「え、東雲さん買うんですか?」
「ふふ、私からの贈り物を受け取って貰える?」
「え、いやいや、反物ってそんなに安くないんですよ?それに、贈り物される理由が……」
「理由なんて後からなんとでもなるわ。貴方に似合うから私が贈りたくなったの。」
「でも……」
「初めて作る着物はこの反物で作って?そして貴方がそれを着る度私を思い出してくれるだけで、この反物を贈る理由は充分あるわ」
「そうですか……?(女が女に贈り物って……嬉しいけどなんか……)」
「お金の事なら気にしないで?私、そこそこ人気なのよ?」
「……はぁ……(そこそこなんて……信長様に付くくらいだもの、きっと1番でしょ……)」
疑問に感じながらも、好意を断りきれず素直に受け取っておく事にした。