第42章 〜42〜番外編①
「おい」
「あ、光秀さん……」
「あら、残念」
東雲さんはそういうと、最後に私の頬に手を添えて微笑んだ。
「では、また」
「……はい……(なんで……?)」
東雲さんは満足そうに私の手を離し、広間へと歩いて行く。
光秀さんとすれ違いざまに何か話しているが、小さ過ぎて話の内容までは聞こえない。
「東雲。あまり勝手に歩き回るな」
「まあ怖い。私は大切な落し物をお届けに来ただけです」
東雲は冷たい目線で答える。
「あいつに冗談は通じないぞ」
「冗談なんて申してませんわ。可愛らしくて、つい」
「……」
「そんな怖い顔……綺麗なお顔が勿体無いわ」
「黙れ。さっさと信長様の所へ戻れ」
「言われなくても」
「…………」
東雲さんはスタスタと広間へと戻っていく。
光秀さんはそれを確認すると、私の元へやって来た。
「」
「は、はい(あれ、なんか不機嫌?)」
「東雲とはあまり関わるな」
「はい、邪魔はしません。もう部屋へ戻ります」
「ああ、そうしろ。」
光秀さんは私の頭を軽く撫でると、広間へと戻っていく。
「……なんなんだろ?」
(まあ、宴はもう出ないし、東雲さんにもう会うことは無いでしょ)
部屋へと繋がる廊下を歩きながら、ふつふつと不安が膨らんでいく。